トイレットペーパー

 生きるために食べる、水分を補給するのであれば、摂取した後に排泄が伴うのは生きている生物の自然の行為だ。しかし、無意識に水洗トイレで簡単に排泄物を下水に流す生活スタイルが日常の私達は、断水した被災中において排泄後の処理に戸惑うだろう。この戸惑いから、水分補給や食事を控える人もいるだろう。しかし、その控えの行動はこれから続く被災生活の健康維持の点で影響があり、最悪の場合は命にも関わることになる。したがって、安心して飲食が行えるように、震災時のトイレ対策は万全にすべきである。

大地震により、地中に埋設された水道管が破損する可能性がある。そうなると断水となり、水の供給がストップする。復旧までには、破損箇所の特定をして、そして修復することになるが、多くの箇所で破損が生じていれば、それだけ相当の時間を要することが推察できる。また、下水道も同じく、地中に埋設された下水管の破損や液状化によるマンホールの浮き上がりがあれば、むやみに汚水を流すことができなくなり、修復を待つことになる。下水道の耐震化は、配管、マンホール、浄水場まで徐々に進められている。もし、何も震災によるダメージが家庭の排水口から浄水場までなければ、汚水を流すことは可能になる。

ここでは、大地震発生の際に比較的確率の高い、下水道の復旧を待つ可能性がある場合の話しをしていく。
被災期間を自宅で過ごすのであれば、既設の便器を用いた方法を考えて準備しておこう。水道と下水道の両方が使用できない場合を想定する。具体的には、先ず破れにくい耐久性のある黒色のビニル袋が必要になる。このビニール袋を便座に被せて使用する。これは汚物を入れて保管するのが目的であり、黒色にこだわるのは中を見えなくすることからだ。基本的は、1回の用足しに1枚を使用する計算になるので、1日の使用頻度、家族の人数、そして日数を考慮して、なるべく多くの枚数を準備しておきたい。例として、1日にトイレに行く回数が大小併せて10回、上下水復旧まで1ヶ月(30日)であれば、一人あたり300枚の備蓄が基本となるが、実際には小便などは小さな子供やお年寄りのタイミングに合わせて行く、家族間であればそんなビニル袋消費削減の工夫も可能になる。
二番目にトイレットペーパーを出来るだけ多く備蓄をしておこう。シャワー機能付きトイレが使えないとなると、トイレットペーパーの消費量が格段に増えるはずである。また、手拭きや清掃など色々な場面で便利に使用できるので、自宅のスペースの許す限り備蓄しておくと安心だ。

黒いビニル袋内に排泄し、使用したトイレットペーパーもこの中に入れる。三番目に必要となるグッズは、”脱臭凝固剤”と称する粉末状の薬品である。これは防災用や非常用トイレ(渋滞時の緊急用)などとして市販されているものだ。脱臭凝固剤の粉末をビニル袋内の汚物に振り掛ける。液体を固形状にする効果があり、漏れの心配がなく汚物の保管性が良くなる。また、脱臭効果もあり臭い漏れも防ぐことが同時に可能になる。最後に、ビニル袋の口をしっかり縛っておく。これら処理済みのビニル袋は、なるべく風通しの良い日陰の冷暗な場所に一時保管することになる。通常は、排泄物を自治体のゴミ出しに入れてはいけないが、震災時には特別な収集と処理を後日行われることになるので、被災中においても分別しておくことをお勧めする。

同様に、企業の事務所や工場においても、同じ準備が必要だ。この準備をしておかないと、トイレは先客数人が使用した後、その排泄物の処理が行えずにすぐに使用不可になることが目に見えている。そのままにしておけば、腐敗し害虫が寄りつき、そこから感染症のリスクも高まる。