報道記事(高齢者不安)

 被災中における避難所生活は、災害弱者にとっては過酷な日々になる可能性が大きい。
最悪の場合、”震災関連死”となるし、死に至らずとも健康を害し、その後の生活に支障を来すことも十分あることは先の震災において知られている。
避難所の利用者は、自宅に留まることの出来ない事情を抱え、やむなく避難所に居住することから、既にその点で災害における生活困難者であるが、更に厳しい状態に置かれる人々への配慮を考えたい。

災害対策基本法において、特に他からのサポートを必要とする被災者を”災害時要配慮者”としている。乳幼児、高齢者、身体障害者の他、妊婦、疾病者、外国人、旅行者などが相当する。また、食物アレルギーなど、食料の材料に制限のある人も入るだろうし、喘息、アトピーなど平時は抑えられているが、発症の恐れのある隠れた疾病者として災害時の弱者とも考えられる。
その中でも、生命や健康面において大きく影響を受けるとされる人々に対しては、周囲の方の理解や助け合いの考えが不可欠である。
震災直後においては、避難所は様々な被災者が訪れるであろう。その中には、着の身着のまま入所する高齢者、自宅療養者や障害者の方も居るであろう。特に初期における彼らへの配慮された対応が大切になってくる。
食事内容、トイレの仕様、ベッドの使用や医療機器対応、介護の対応など、特別な援助がすぐにも求められる。
通常、このような特別な支援配慮が必要になる被災者向けに、”福祉避難所”が開設される。
福祉センターや老人ホームなど、標準でバリアフリー化された施設が指定されている。また専門のスタッフが周囲にいることで、一般の避難所よりは安心して生活することが出来る。同様に”妊産婦、乳児救護所”として、専門スタッフ(医師や看護師)のいる避難所も設置する自治体もある。平時と変わらない物資の備蓄を持ち、妊産婦や乳児へのケアを行え、非常時用の分娩セットでの出産対応も考慮されている。

避難行動要支援者(ひなんこうどうようしえんしゃ)名簿、この存在を知っているだろうか。自治体では、誰が災害時に特別な救援を必要としているかを名簿で把握している。
高齢者の世帯、平時に介護を必要としている方、難病の疾病者、医療装置にて生命維持を行っている方など、特に大きな困難を災害時に強いられる方をあらかじめ自治体が知っておき、関係部署(消防、警察、避難所など)と情報共有して、安否確認と避難における必要な対応を施すことが目的である。この名簿記載はプライバシーへの配慮もあり、義務ではなく同意式(登録式)で実施している。名前、住所、年齢や要支援の理由など個人情報が含まれてはいるが、ここは震災時における命綱になる可能性もあるため、名簿記載のために登録することをお勧めしたい。詳しい内容については、お住まいの自治体(市区町村)に問い合わせて欲しい。

災害弱者への配慮については、自治体において進められている。
しかしながら、まだ十分とは云えず、地域によっての差があるだろう。施設数に対しての受け入れ予想人数が多い、被災中に本当に対応スタッフを準備できるのであるか、開設期間の延長が可能であるのか、様々な問題を抱える自治体が多いのも事実である。
忘れてはならないのは、同じ被災者の中にもより大きな困難を持つ方々が居ることだ。そして、彼らは非常に遠慮深く、要望を声に出して言わないことである。なので、「何か手伝いましょうか?」、「○○しましょうか?」と要望を話しやすいようにしてあげたい。
聴覚の不自由な方には、メモ帳やスマホの画面を使って会話したり、視覚の不自由な方への付き添い時には、ラジオ実況のように言葉で的確に伝えてあげるなど、丁寧な対応を心がけたい。
被災から逃れた喜びを全ての避難所利用者と分かち合うためにも、弱者優先の余裕を持って欲しい。