洗濯物

 被災中、停電が続けば洗濯機は使用できない。それ以前に、断水していたら洗濯そのものが難しくなる。近くに川が流れていれば、昔ながらの人力による洗濯も可能であるが、都市部に暮らしていては、それも出来ない。
運良く、お風呂の残り湯を溜めてあれば、それを手洗いによる洗濯に使い、洗濯排水はトイレ用にリサイクルすることも出来るだろう。
いずれにしても、洗濯に使用できる水は大きく不足していることなので、普段通りではなく工夫や考えが求められるだろう。

先ず、洗濯することを前提に出来ることを考えてみよう。
使用可能な水は、お風呂の残り湯、そして自治体で管理している防災用の井戸水が考えられる。
着用したら洗濯する、この考えでは1回限りの実施で終わってしまうことは明らかである。
なるべく洗濯をしなくても済むようにすべきで、やはり肌に直接触れる下着や肌着類を優先的に洗いたい。すなわち、シャツやズボン類は極力洗濯することなく、複数の衣類を回転で賄えられるようにしたい。
洗剤を全く用いず水洗いのみも可能であるが、私の経験上で云うと洗剤は使いたい。界面活性効果により汚れが生地から分離しやすいのが主な理由だ。また、抗菌・防臭作用も機能として配合している洗剤もあるので一石二鳥である。ただし、すすぎを1回で終わらせるため、使う洗剤の量は極少量にしたい。
手順を説明しよう。
1.洗面器に風呂の残り湯を張る、その中に洗剤を少量溶かし込む(液体洗剤が簡単)。
2.洗う衣服(下着、肌着、靴下など)を30分~1時間程度漬け込む。
3.その後、手洗いで洗濯物を洗う。
4.よく絞る(洗濯排水は捨てずにトイレで使用する)
5.そして、新たに水(風呂の残り湯)を洗面器に張って、絞った衣服を1つずつすすぐ。
  (上下の下着からすすぎ、最後にすすぎ残しの影響少ない靴下をすすぐ。)
6.絞った衣服を一度広げ、畳んで形を整えて手の平で叩くようにプレスする。
  (こうすると、アイロンがけ不要であり、しかも清潔感がでる。)
7.中身の見えない洗濯ネットに入れて、風通しの良いところに干す。

どうだろうか、洗面器に2杯の水での洗濯方法だ。衣服の量は洗面器に入る程度と考えておこう。重要なことは、洗剤を入れすぎないことだ。ほんの少しで十分汚れは落ちる。

次に洗濯がまったく出来ない状況を考えてみよう。
そもそも風呂の残り湯がない、あるいは使って底をついてしまったなど考えられる。
水を使った洗濯は出来ない。では、どうするか。
大きく2つの方法が考えられる。
1つめは、抗菌・防臭効果を持つスプレー式の洗浄剤、または重曹を使った水溶液のスプレーする方法だ。衣服にスプレーすることで、汚れや臭い成分を吸着するケミカル剤である。乾いた後に叩いてあげれば、汚れなどが衣服から落とされるだろう。
さて、このケミカル剤を用いた方法であるが、使用不可能な生地もあるので容器ラベルを読み注意したい。また、個人的は意見であるが上下の下着・肌着類への使用にも肌への影響がゼロではないため気をつけたい。
2つめは、下着の汚れ易いところに、肌に直接当たっても問題のないコットンシート(綿100%の衛生用品)を載せておくことだ。価格も適正であり、価値は高い。これにより、しばらくはコットンシートの交換で下着の衛生状態を保つことが出来る。代用としてティッシュペーパー数枚を重ねて使用するなどもあるが、着け心地からすると専門の用品に軍配が上がるだろう。
そして、旅行用(防災用)の使い捨て下着の使用である。材料は紙製(柔らかく加工した)が多く、価格は1枚100円前後からある。使い捨てを前提に商品化しているため、サイズや履き心地への満足度は低い。もしかしたら、使い捨てでない下着の方が、コストパフォーマンスが高いかもしれない。
いずれにしても、これらを実践するには、事前の準備・備蓄が必要であるので、検討しておいてもよいと思う。