家族

 身の危険を感じたときに”焦らず、落ち着く”というのは、なかなか出来ることではない。どうしても緊急避難的に急ぎ慌ててしまい、不慮の怪我をしたり、誤った判断をしてしまうことがある。火災の初期消火において、火の回った鍋の油に向けて慌てて水を撒き、飛散した油と火炎により大やけどをする例もある。家屋の倒壊を恐れて2階の窓から飛び降りたり、下り階段を踏み外したりして怪我をする例も、そこまでの緊急避難を要さない地震においても起こっている。火災の延焼から貴重品を守るため、手当たり次第バッグに詰め込んで避難したり、大切にしてたピアノを玄関先まで引きずり出していたり、後に危機が去り、当人がそれら自分のした行為を知り驚く。一見、冗談のように思われるかも知れないが、危機を回避するためのとっさの行動は、誰にでもあり得る。急ぎの行動の中でも、”焦らず、落ち着け”と自身に言い聞かせる一呼吸を持つようにしたい。

一方、「まだ、大丈夫だよ。」と落ち着き過ぎるのも問題である。東日本大震災(3.11)の時には、世界一の防潮堤・防波堤の存在を過信して、高台への避難移動をためらう人達も多く、これが不幸にも犠牲者を増やしてしまった(一方、孫に泣きながら高台への避難を懇願されて、結果的に命拾いをした高齢者もいた)。時には、より安全に向けた行動とは何か考える(「何か、思ったより深刻なことになるかも知れないぞ。」)、そして実行する(「身の安全のためにはこれしかない。」)、そんな状況における対応力が必要になる。

やはり、落ち着いて行動の判断を下せるように、日々の防災に対する知識や関心が大切になると考えている。人はどうしても危機に直面すると、少なからず焦ってしまう。そして、①慌てて行動をする人、②安全側に理屈をつけて何もしない人、そして③諦めてしまう人の3パターンに行動が分かれると思うが、日々の防災への関心や知識があれば、焦りの中にも、冷静に「今はどうすべきか」と正しい行動に向けて考える余裕が出ると考える。
そうすれば、危機が迫ってきたときに、少なくとも自身の命を守ること含めて、被害を最小限に抑える確率が高まると思う。
この情報サイトによって、防災に関する知識を増し、日々の防災意識を高めることへのきっかけになれば、とても喜ばしいことである。もちろん、更に一歩進んで、近くの訓練イベントへの見学や訓練への参加をしてみれば、よりリアルに防災への思考が高まり、それが落ち着いた行動へ導いてくれるものと考えている。