消防署

 大きな都市計画から外れ、古くから変わらない下町と呼ばれる木造家屋がひしめく地域や、郊外での密集住宅市街地が多く見られる。特に耐震性の不十分な古い建築基準(既存不適格)の木造住宅密集地は、火災に対する防御の対応が間に合っていない状況である。地震による火災の発生には、家屋の倒壊が原因となることが多いと云われている。耐震基準に見合わない住宅は火災発生のリスクを持っている。しかも、そのような住宅の密集地では、消火活動に向かう消防車両が狭小な道路事情を理由に、現地まで到達できないことが既に分かっていて、火災延焼を防ぐための大きなハードルとなっている。これらの地域は、既に自治体のハザードマップ上においても示されていて、家屋の耐震補強、防炎材料を用いた改築の推奨や、道路拡張整備について住民への理解を促しながら、少しずつ進められているが、全てにおいて時間を要しているのが状況である。

さて、出火してしまった場合、私達に出来ることは何であろうか。それは、初期消火で被害をくい止めることだ。
火災発生場所での初期消火が、その先その地域の命運を左右する。すなわち、火元、あるいは近隣が、手元の消火器・消火商品などで対処できる範囲を理解しておき、準備と訓練をしておくことにある。
水蒸気を多く含む白煙の場合、初期消火が可能な範囲だ。しかし、発火している場所に向けてむやみに水を撒いてはいけない。もし、燃え上がった油に水を注げば、急激に水は沸点を超え、熱い油とともに激しく飛散して危険である。不慮の火傷はその後の被災生活に大きな支障を与えてしまう。十分気をつけたい。
消火器・消火剤は火元の種類(固形物、液体、電気発火など)によって異なるので、なるべく万能な薬剤が充填された消火器を用いる、または酸素を遮断して消火させる方法が良いだろう。
激しく燃えて、黒い煙が発生するようになると、もう初期消火の範囲を超え、対応は難しい。煙が黒いのは、ガスを含んでいるからだ。ここから一気に激しく燃えるフラッシュオーバーへ進む可能性が高くなり、人命第一すぐにも避難すべきである。その際、決して煙を吸わないようにする。

阪神淡路大震災では、初めて震度7を経験した(甚大な揺れであったため、7を加えた)。家屋の倒壊から火災の発生、そして延焼を招き多くの犠牲者を出したため、家屋の耐震基準も見直された。すなわち、震災以降に建てられた住宅は、新耐震基準(2000年改正)を満たすことが義務になっている。しかしながら、前述の通り、まだまだ旧基準の住宅、しかもその密集化は、都市部においてたくさんあるのが実情だ。やはり、初期消火の徹底が鍵となる。なので、自治体や近くの消防署などで開催する初期消火訓練(煙からの脱出訓練)などに参加して、万が一の時に慌てずにベストの判断が出来るようにすることが、今誰もが出来ることである。もちろん、日頃の火の用心も出来ることである。