高層マンション群

 長周期地震動、特に高層ビルの上層階において注意すべき揺れである。
一般的に日本における高層ビルの耐震性は、地震国ならではの優れた技術を持っているので、建物そのものが転倒倒壊することは確率として小さい。ビルの構造設計としては、建物が折れることなく、樹木のようにしなやかに外力を直接受けないようにしている。
しかしながら、数秒から数十秒と長い周期の振動を高層ビルが受け続けると、それが建物の持つ固有振動域と共振し、ちょうど海上の船の上にいるような、ゆっくりとした大きな揺れが長く続く、これが長周期地震動である。
東日本大震災(3.11)発生時、首都圏にある多くの高層ビルで長周期地震動によるビルの揺れが起きた。投稿されたネット動画で発生時の様子など見ることができるので、イメージの参考にして欲しい(”長周期地震動”として実験映像も参考に)。

左右にゆっくりと大きく揺れ、固定されていない什器(事務机、椅子、サイドテーブル、複写機など)などは、揺れに合わせて大きく移動することになる。
人も立っていることが難しくなる。当然、移動するのに苦労するだろう。
低層階のオフィスであれば、落下物への注意を最優先に考えればいいが、高層階オフィスの居住者は、この水平方向に大きく移動する物体への注意も同じ最優先として考慮しなければならない。移動距離が大きいことは、それだけ衝撃エネルギーを持っていることになるからだ。

揺れの規模にもよるが、固定されていない什器に囲まれていたら、無傷でこれを回避することは相当難しいだろう。事務机に潜り込んだとしても、この机自体も水平移動することになるからだ。
唯一の対策は、事前に防振(防震)対策を什器に施しておくことである。背の高い書棚やキャビネットは壁や床に固定する。出来れば事務机も床に固定できれば安心である。そして、逃げ場を確保しておくことである。

敢えてもう一つの対策を挙げると、免震や防振など長周期地震動対策を行っているビルへの移転、または低層階への移転だ。スタッフの安全を考えたら、検討として無視できない項目だと思う。